生物多様性条約(CBD)とは

生物多様性条約(CBD:Convention on Biological Diversity)は、1992年5月22日に地球サミットで採択され、1993年12月29日に発効した国際条約です。

この条約は、生物多様性に関するあらゆる側面を対象とする世界的な合意であり、国境を越えて存在する生物を守るために、地球規模での取り組みが求められています。条約の主な対象は遺伝資源(※1)、伝統的知識(※2)であり、目的は以下です。

  • (※1) 遺伝の機能的な単位を有する植物、動物、微生物その他に由来する素材であって、現実の又は潜在的な価値を有するもの。(ヒトの 遺伝資源等の一部の例外を除き、単細胞生物(大腸菌等)を含め殆ど全ての遺伝資源が対象)
  • (※2) 植物・動物等、それらから得られる産物(植物エキス、はちみつ等)を含む地方独特の言い伝え
    例)先祖代々ある部族において、特定の植物の葉をすりつぶしたものを傷に塗って治している

生物多様性条約(CBD)の目的

  • 01

    生物多様性の保全

  • 02

    生物多様性の構成要素の持続可能な利用

  • 03

    遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS: Access and Benefit Sharing )

生物多様性条約
(CBD)
海外で遺伝資源を採取 遺伝資源の採取には事前の許可が必要(採取できない国もある)
海外の遺伝資源の購入や授受 海外の研究者から遺伝資源を貰った場合や外国由来(日本国内で購入)の商品もCBDの対象になる可能性がある
海外の遺伝資源の持出 遺伝資源を無断で国外に持ち出すと罰せられる可能性がある
海外の遺伝資源の使用 海外の遺伝資源を用いた研究も生物多様性条約の対象となる

遺伝資源へのアクセスと利益配分

CBDの目的の1つであるABS(Access and Benefit Sharing )は、
「その国に生息する生物に対して、国が権利を持つ資源として扱うこと。
両国で利益を公正に配分すること」を意味しています。

このABSを確実に実施するため、CBDを補完する国際的な取り決めとして、2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会合(COP10)において名古屋議定書(正式名称:生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書)が採択されました。

ABSの基本的な枠組みとしては以下です。

  • 01

    遺伝資源等を入手する際には、必要な情報を事前に知らせた上で、資源保有(パートナー)国からアクセス(利用)の事前同意(PIC:Prior Informed Consent)= 法的許可を得る必要がある。

  • 02

    提供者との契約に基づく、相互に合意する条件(MAT: Mutually Agreed Terms)によって、遺伝資源利用(研究開発、商品化等)から生ずる利益を公正かつ衡平に分配する必要がある。

遺伝資源から得られる利益を配分する際の「利益」とは単純に金銭的なものに限りません。以下に示すのは一例です。

金銭的利益配分

  • 取得の機会に関する料金又は採取その他の方法によって取得した試料ごとの料金
  • 段階ごとの支払
  • ロイヤリティの支払
  • 商業化の場合におけるライセンス料
  • 研究資金
  • 関連する知的財産権の共同保有

非金銭的利益配分

  • 研究及び開発の成果の共有
  • 科学的な研究開発計画(特にバイオテクノロジーの研究活動)における共同、協力及び貢献
  • 商品開発への参加
  • 教育及び訓練における共同、協力及び貢献
  • 技術移転のための能力の強化
  • 地域経済への貢献

遺伝資源利用の基本的な流れ

  1. 1

    資源提供者もしくは機関と相互に同意する条件(MAT = 契約)によって、遺伝資源利用(研究開発、商品化)から生ずる利益を公正かつ衡平に配分することに合意。

  2. 2

    必要な情報を事前に知らせた上で、遺伝資源保有(パートナー)国からアクセスの同意(PIC = 許可)を得る。

  3. 3

    資源提供者もしくは機関と素材移転契約(MTA)を締結し、遺伝資源を国外に移転もしくは持出す。

    ※必ずしもMTAは必要ではなく、遺伝資源の提供・取得と利益配分を含めた契約(ABS契約)が締結されていれば良い。但し、数次に亘る移転に際しては、下位契約としてMTAを締結する場合がある。

  4. 4

    資源保有(パートナー)国がABSCHに情報提供を行った場合、国際遵守証明書(IRCC)が掲載される。

  5. 5

    利用者はIRCC掲載後に環境大臣に報告を行う。

  6. 6

    報告から約5年後に環境省からのモニタリング(遺伝資源の利用に関連する情報提供)に対応する。

資源国および利用国における遺伝資源利用の基本的な流れの相関図
  • MAT:Mutually Agreed Terms(相互に同意する条件)
  • MoU:Memorandum of Understanding(基本合意書)
  • PIC:Prior Informed Consent(事前の情報に基づく合意)
  • MTA:Material Transfer Agreement(素材移転契約)
  • IRCC:Internationally Recognized Certificate of Compliance(国際遵守証明書)